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東京高等裁判所 昭和48年(ラ)324号 判決

抗告人 鈴木秀幸

右代理人弁護士 河本喜与之

主文

原決定(別紙物件目録(一)に関する競落許可決定)を取消す。

右競落は、これを許さない。

理由

抗告人の抗告理由は別紙記載のとおりである。

一、本件および東京地方裁判所昭和四七年(ケ)第八二号建物競売事件記録によれば、左の事実を認めることができる。

債権者は昭和四二年一月二七日付信用金庫取引契約に基づき、債務者に対し継続して手形割引、当座貸越などの取引をしていたものであるが、右債権を担保するため別紙物件目録(一)ないし(五)の不動産の上に、元本極度額を金三〇〇〇万円とする根抵当権を有し、かつ右による貸付元金は右極度額を超過していたこと、債権者は前記継続的契約を解約した上、右根抵当権に基づき貸付元金のうち金三〇〇〇万円とこれに対する昭和四六年四月二一日以降日歩四銭の割合による約定損害金の支払を求めて(一)および(二)の土地に対し競売申立をしたこと、(一)については金七五一万円、(二)については金二三八〇万円で競買申出があり、右競落を許可する旨の決定があったが、抗告人から右(一)の物件についてされた競落許可決定に対し、右は過剰競売であること等を理由として本件抗告に及んだこと、債権者はこれより先、前記抵当権に基づいてまず(三)ないし(五)の物件について競売を申立て(東京地方裁判所昭和四七年(ケ)第八二号)、(三)については金一二七〇万円、(四)(五)一括で金一八三〇万円で競落されたこと、(三)の物件に対する右抵当権は四番抵当であって、これに先立つ負担として元本合計金一〇五〇万円の抵当債権が存したこと、そして東京地方裁判所昭和四七年(ケ)第八二号事件において、債権者は右元本債権金一〇五〇万円および本件申立債権のうち金一五〇〇万円、以上合計金二五五〇万円に対する昭和四六年四月二一日から同四七年一二月一五日までの損害金金六二三万一四〇円と、右元本合計金二五五〇万円のうち金二四四五万九五三四円および手続費用金四六万一七六四円の支払を受けたこと、

以上のとおり認めることができる。

二、以上認定の事実に基づいて東京地方裁判所昭和四七年(ケ)第八二号事件における売却代金交付の結果、本件申立債権の残額は何程であるかについて検討する。

まず(三)の物件の売得金一二七〇万円があるが、これは前記優先抵当債権である元本一〇五〇万円とこれに対する昭和四六年四月二一日から同四七年一二月一五日まで六〇五日の日歩四銭の損害金三〇七万三四〇〇円の弁済に充当され、本件申立債権の弁済に充てられるべき余剰はない。

そこで(四)(五)の物件の売得金一八三〇万円が本件申立債権に対し、どのように弁済充当されたかを考えてみるに

(1)代金支払期日から代金支払までの利息が151,438円×183/310=89,397円ある。これを上記金一八三〇万円に加えると金一八三八万九三九七円となる。

(2)このうちから手続費用461,764円×183/310=272,557円を差引くと、金一八一一万六八四〇円となる。

(3)つぎに金一五〇〇万円に対する昭和四六年四月二一日から同四七年一二月一五日まで六〇五日分の日歩四銭の損害金は金三六三万円であるから、これを差引くと金一四四八万六八四〇円となる。

(4)これが本件申立債権元本金三〇〇〇万円に入金となるので残額は金一五五一万三一六〇円である。

(5)したがって本件申立債権額は(イ)元本残額金一五五一万三一六〇円、(ロ)元本のうち金一五〇〇万円に対する昭和四六年四月二一日から日歩四銭の損害金(ハ)元本のうち金一五〇〇万円に対する昭和四七年一二月一六日から日歩四銭の損害金となる。そして損害金をかりに昭和四八年八月二〇日までとして計算すると、その合計は金六六〇万六〇〇〇円、元本との総計は金二二一一万九一六〇円となる。

(6)なお失業保険保険料一八万七一八八円、軽自動車税一六二〇円、固定資産都市計画税七九三〇円が滞納になっていることが認められるので、優先すべき公租公課の合計は金一九万六七三八円である。

以上総合計は金二二三一万五八九八円であるところ、本件(二)の物件の売得金は金二三八〇万円である。そうするとなお余剰が一五〇万円近くあるから、右金額は昭和四八年八月二一日から代金交付までの損害金および本件競売手続費用を償うことができるものといわなければならない。

以上のとおりであるから物件(一)についての競落許可決定は失当であり、本件抗告は理由があるから、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩野徹 裁判官 中島一郎 桜井敏雄)

〈以下省略〉

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